(104) 悟りを開く釈迦牟尼を偲ばせる
横浜・龍雲寺のボダイジュ大木

横浜市都筑区東方町にある龍雲寺には樹齢400年を超えるボダイジュ(菩提樹)の大木があります。この菩提樹は単に大きいということだけでなく、その木蔭に一体の仏像があり、悟りを開く釈迦牟尼の姿を偲ぶことができます。

    

 (104-1) 昔の面影をとどめるお寺

 龍雲寺は横浜市内にありながら、武蔵野国都筑郡東方村の面影をよく残し、田園地帯の一角の山すそにあります。開創年は天文24年(1555年)だそうですから、400年余りそのたたずまいは変わっていないのでしょう。
 寺の入り口には「暑き日には暑さを愛し、雨の日には雨を愛す」と掲示されていました。

  

 (104-2) 菩提樹の大木

 本堂前の左わきに菩提樹の木はありました。予想していたよりもはるかに大きく、樹高10mあまり、幹の直径は60~70cmはあると思われる、こんなに大きな菩提樹は始めてみました。根元からは多数のヒコバエが芽をだし、幹が見えないくらい繁っていました。葉は先がとがった三角形をしており、この木がボダイジュであることを示したいました。

 そのような菩提樹の大木の木蔭に、一体の仏像が単座していました。仏教の開祖である釈迦牟尼が菩提樹の木の下で瞑想し、悟りを開いたという話は良く知られていますが、この像はその話に因んで設置されたものでしょう。

 

  (104-3) 菩提樹の木陰に単座する釈迦牟尼像
釈迦牟尼像を見てギョットさせられました。目はくぼみ頬はコケ、あばら骨が浮き出した姿は鬼気迫るものが有ります。
私たちが良く見かける仏像はふくよかで優美な雰囲気を漂わせていますが、この釈迦牟尼像はそれとは大きく異なるります。瞑想に打ち込み悟りに至る釈迦牟尼の、生きる人間としての極限の姿を現しているようです。
 
目の前の像は厳しい修行に耐え、飲まず食わずで瞑想に打ち込み、悟りを開かんとする釈迦牟尼の苦闘の姿でしょうか。これまで見てきた穏やかでふくよかな仏像は、悟りを開いた後の心穏やかな釈尊の姿でしょうか。

   

 (104-4) 菩提樹の花

 訪ねたときちょうど菩提樹は満開の花を咲かせていました。像の周りにも一面に菩提樹の花が散り、ふくよかな香りを漂わせていました。良く見ると単座する釈迦牟尼の手のひらにも菩提樹の花びらが散り、瞑想に疲れた釈迦牟尼を和ませ癒しているように見えました。

 しかしインドでの釈迦牟尼にはそのようなことはなかったでしょう。釈迦牟尼がその木の下で瞑想し、悟りを開いたと伝わるインドの菩提樹(インドボダイジュ)はイチジク科の木ですから、外から見える形では花は咲かず、ハラハラと花びらが散ることもないからです。
 
 菩提樹をはじめ仏教に因む三聖樹は、インドから長い道のりと長い年月を経て日本に伝わり、その間に随分変わったものになっているようです。インドのブッダガヤにあると聞く本家の菩提樹(インドボダイジュ)を見に行きたくなりました。

  

   樹木写真の属性
 樹  種 ボダイジュ(菩提樹) [シナノキ科シナノキ属]

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 樹木の所在地  神奈川県横浜市都筑区東方町1300  
 撮影年月  2017年6月
 投稿者   中村 靖   
 投稿者住所  横浜市都筑区中川中央
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