(66) 藤と共生し巨木になった
島根・木路原天満宮のムクノキ

 島根県川本町に「木路原天満宮のムクノキ」と呼ばれる巨木があります。ムクノキ(椋の木)は地味な樹で全国的にも巨樹・巨木になるまで存続している例は少ないのですが、この樹がどうして巨木になりえたのか、その疑問は藤の花が咲く5月上旬頃、この樹を訪ねると解消します。

(66-1) 木路原天満宮

 JR三江線の無人駅・木路原駅からすぐ近くに木路原天満宮はあります。天満宮と言っても現存するのは小さい祠と石碑のみですが、その前にムクノキ(椋の木)の巨木が、祠に覆いかぶさるように立っていました。

 

  (66-2) 椋の木の古木
 
この椋の木の公称値は幹周8.3m、樹高30mで、根元に立ってみると圧倒されるほどの巨木です。しかしビックリさせられるのは椋の木に太いカズラ(蔓)が巻き付き、そのためか幹には大きなコブや空洞ができ、痛々しいほどです。蔓の太さも驚くほど大きく、かなり前から、もしかしたら椋の木が小さいころから巻き付いているのかもしれません。
一般に樹木に蔓などツル性の植物が巻き付くと、樹木が痛めつけられ、成長も阻害され、樹木にとって好ましいものではありません。蔓を除去してやれば、ムクノキも伸び伸びと成長し、もっと大きな樹になれたであろうにと思いました。

  

  (66-3) 5月上旬の光景
 
5月花の時期にこの椋の木を再度訪ね、思いは一変しました。高さ30mの椋の木を覆い尽くして藤の花が咲き誇っていました。単なる蔓のように見えたものは藤蔓だったのです。
ロールオバー画像;マウスポインタを画像合わせると画像が変わります]:
 椋の木の樹冠いっぱいに広がり、流れ落ちる滝のように藤の花を咲かせている様は、まさに感動的な光景です。これを見れば、藤蔓を切り除くことも、椋の木を切り倒すこともできないでしょう。椋の木は巨大な藤棚となり、藤と共生することで地域のシンボルとなり、やがて巨木に成ったのです。

  

  (66-4) 椋の木の花と藤の花
下写真、左が椋の木の花、右が藤の花です。どちらがキレイと思いますか?どちらが好きですか?
 
全ての樹木はそれぞれの特徴を秘めた花を咲かせ、貴賎上下の差はないのでしょうが、幸か不幸か藤の花の方が人間の好みに合ってしまっただけのことでしょう。それにしても、この樹が「木路原天満宮のフジ」ではなく「木路原天満宮のムクノキ」と呼ばれるようになったのはなぜでしょう。一時的な華やかさではなく、たとえ地味でも365日頑張って立ち尽くす樹木の方に、この地域の人々は心引かれたのかも知れません。

    

   樹木写真の属性
 樹  種 ムクノキ(椋の木)  [ニレ科ムクノキ属]
フジ(藤)  [マメ科フジ属]

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 樹木の所在地  島根県邑智郡川本町川本2285-1
 撮影年月   2013年5月
 投稿者   木村 樹太郎 
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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