(97) 見てびっくり、調べてびっくりの
三見吉広のバクチノキ

山口県萩市の三見吉広と言う所にバクチノキと呼ばれる珍しい木があると知り会いに行きました。樹木を訪ねる時、その樹木が神社や寺院にあるときには比較的容易にたどり着けるのですが、山野に立つ樹木の場合には意外に大変です。近くまで行き何時間も探した挙句会えずに帰ることも良くあります。三見吉広のバクチノキは果たして訪ね当てることができるか、一抹の不安を抱きながらの探訪でした。

    

 (97-1) 道路わきに立つバクチノキ大木

 山陰線三見駅で道を聞き、教えられた方向に車を10分くらい走らせると、道路に覆いかぶさるように斜面に立つ大木が見えてきました。
 「これかな?」と思い車を止めて近付いてみると、小さい標識があり「バクチノキ」と書いてありました。 バクチノキは道路を走る車からも良く見え、会いに行くにはまことに好都合な木でした。

  

  (97-2) 身ぐるみ剥がれたバクチノキ
 
近付いてみて唖然とさせられたのは、その木の色です。まるでペンキを塗ったように、幹から枝の先まで赤褐色をしているではありませんか。
この木は次から次へと表皮がはげ落ち、赤褐色の樹皮がむき出しになる特徴があり、その様が博徒が博打に負けて身ぐるみ剥がされる様に似ていることから、「バクチノキ」と呼ばれるようになったのです。それにしてもその鮮やかな色には驚かされました。
幹周:2.3m、樹高:17mは巨木と言えるほどの大きさではありませんが、バクチノキとしては全国的に有数の大きさのようです。 バクチノキがこんな色をしているのは、博打に負けて恥じ入っているのか、やけ酒を飲んだからなのか、バクチノキは答えてくれません。

 

 (97-3) バクチノキはサクラの仲間!

 バクチノキの葉はツバキのように分厚く表面に光沢があり、一目で常緑樹と分かります。残念ながら訪ねた時(8月)には花が咲いておらず、花を見ることはできませんでした。 後日、図鑑等で調べて左写真下のような花(花期は9,10月)を咲かせることが分かりました。
 図鑑を調べて驚いたことに、この木:バクチノキがバラ科サクラ属に分類されているのです。樹皮や葉の特徴からして、この木がソメイヨシノのようなサクラの仲間だとはとても思えなかったのですが、花の特徴をよく見ると、サクラ属のウワミズザクラに似ていますから、なるほどと納得させられました。

  

  (97-4) 汚名返上を願うバクチノキ
 
バクチノキ大木の根元に樹齢10年に満たないバクチノキ稚樹が育っていました。実生のバクチノキでしょう。このバクチノキ稚樹は親木のような赤褐色をしていません。ということはバクチノキと言えども生まれながらにして博打に溺れているわけではないということでしょう。
かつてブナ(橅)は材木として役立たないことから「ぶん投げ木→ブナ」と呼ばれ無視されていましたが、環境重視の時代になり「森の女王」とまで呼ばれるようになりました。バクチノキにとってその名は必ずしも名誉ある名前ではないでしょう。バクチノキもいつの日か名誉が回復されることを願わずにはおれません。

  

   樹木写真の属性
 樹  種 バクチノキ(博打の木) [バラ科サクラ属(バクチノキ亜属)]
 樹木の所在地  山口県萩市三見吉広  
 撮影年月   2016年 8月
 投稿者   木村 樹太郎   
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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