(3)樹木と航空写真(2012年10月アップ)
飛行中の航空機から地上を撮影した航空写真には、ほぼ真上から撮影した樹木(真上から見た樹冠形状)が写っており、条件にマッチした航空写真は以下のようなことに役立ちます。
(A)広い範囲の樹木の分布状況の把握
(B)樹種の推定
(C)影の長さに注目した木の高さの推定
などです。樹木ウオッチングに出かける前に、目的地の航空写真で樹木に関する情報をつかんでおくと、効果的な樹木ウオッチングが可能です。
航空写真は国土地理院から提供されていますが、目的によってはインターネット上のGoogl Mapsの航空写真も使用できます。
(3-1)樹木の分布状況把握と樹種の推定
下の写真は東京都文京区の東京大学本郷キャンパス(一部)の航空写真(Googl Mapsより)です。写真の上側が北です。この写真を例題に樹木の分析を行います。
この航空写真は樹木の着色具合から、紅葉の時期に撮影されたものでしょう。紅葉の時期に撮影された航空写真は、樹種の推定に特に好都合です。
(a)正門(写真左側)から安田講堂(写真右側の半円形の建物)につながる通路沿いに点在する黄色い小さい丸は、黄葉した銀杏と思われます。
(b)安田講堂西側の広場の二つの大きな緑の丸は楠木など、常緑広葉樹でしょう。
(c)安田講堂東側(裏側)の緑の小さい丸はヒマラヤスギなどの常緑針葉樹と思われます。
(d)法文1号館北側の茶色い部分は欅などの落葉広葉樹の並木と思われます。欅は枝張り大きいので木と木の枝がくっついています。
(e)左上建物南側(前面)の庭にある黄色い大きな丸は、その葉の色から銀杏ではないかと思われます。
(f)法文2号館南東側には落葉広葉樹と常緑樹が混交した小さな森があります。
などなど、樹木の分布状況分析と樹種の推定ができます。
(3-2)樹木の影に着目した樹木高さの推定
下の写真は東京都葛飾区の水元公園の一部を表す航空写真(Googl Mapsより)です。この写真には樹木の影がはっきりと映っており、これを例に樹木の高さを分析してみます。
(a)写真の左上から右下にかけて点々と連なる黄色を帯びた小さい丸の樹木Aの影と、その東側(右側)の大きな丸の常緑樹Bの影の長さを比較すると、樹木Aは樹木Bより樹高が高いことがわかります。特に樹木Aはその樹冠直径に対して樹高が非常に高いことから、これはポプラのような落葉広葉樹ではないかと思われます。
(b)影が写っている地面が平坦である場合には、写真の中におおよその高さがわかる標準物(たとえば電柱や人)を見つけ、その影の長さを手掛かりに、対象樹木のおおよその高さを下記の式で推定することができます。
対象樹木の高さ(h)≒(標準物の高さ)X(対象樹木の影の長さ)/(標準物の影の長さ)
(c)上の写真左側の運動場の中の白い点は人物と思われます。人の平均的高さを1.6mとし、その影の長さを基準として、樹木Aの高さは約24m、樹木Bの高さは約16mと推定されます。