(2)樹木の大きさ(2012年7月アップ)

 樹木の大きさを見てその樹木の種類や大体の樹齢が推定できるようになると、樹木ウオッチングも奥行きが深くなり楽しさも増してきます。樹木は年輪を形成して年々大きくなりますが、全ての樹木が年と共に大きくなり、やがて大木・巨木になるわけではありません。樹木の大きさを決める主な要因として、ここでは(A)樹種、(B)樹齢、(C)環境、を取り上げてみます。

(2-1)樹種と樹木の大きさ
 *樹木は大きさにより下表のように(1)高木、(2)小高木、(3)低木、(4)小低木の4クラスに分けられます。表には成熟した樹木がどのクラスになるか、代表的な樹種を示しています。表より明らかなように樹木の種類により大きくなる限界がはっきりしています。

(2-2)樹齢と大きさ
*一般に樹木は年輪を形成して年々大きくなり、特に高木になる樹は数十年・数百年かけて生長しますが、その生長のしかたは上長生長と肥大生長に分けられます。
 (a)上長生長:樹の高さを増す生長。これは比較的早く飽和に達し、樹の寿命の1/3程度の年月で上長生長は止まる。
 (b)肥大生長:樹の太さを増す成長。一般に上長成長が止まった後も、肥大成長は永く続く。したがって長寿命の樹は幹が太い大木になる。
*具体的に「スギ」についてみると、スギは50年程度で上長生長が止まりますので、20年生スギ、50年生スギ、100年生スギを比較してみると、幹の太さと木の高さは以下のようになるでしょう
   幹の太さ・・・20年生スギ<50年生スギ<100年生スギ
   木の高さ・・・20年生スギ<50年生スギ≒100年生スギ

(2-3)樹木の大きさに影響する環境
*樹種と樹齢が同じなら、どの樹木も同じ大きさになるかと言うと、決してそうではありません。個々の樹木が置かれている環境(日射量、栄養、水分量など)により樹木の大きさに差が現れます。
*日射量、栄養、水分量が不足(あるいは過多)している場合、樹木の成長が阻害されます。不足や過多が大きい場合には、何年経ってもほとんど大きくならないとか、著しい場合には枯死してしまうことになります。
*下の写真は樹齢約60年のスギの切り株の年輪を示します。 樹齢27年ころまでは年輪幅が大きく、生育環境が良かったと思われますが、27年を過ぎるころから年輪幅が小さくなり、生育環境が悪くなっていることがうかがえます。これはおそらく27年目くらいに樹冠閉塞(隣の木々がくっつき会うこと)が起こり、十分な日照が得られなくなったためと思われます。


*環境に関しては自然災害も忘れることができません。樹齢数百年の大木も千年に一度級の自然災害で消滅してしまうこともあり得ます。樹齢が長ければ長いほど大きな自然災害に直面する運命に有ります。
*私たちの前に立つ大木は多くの条件にめぐまれ、永い年月の間の多くの困難を乗り越えてきた、まさに奇跡的存在と言えましょう。

[ 本項の参考文献 : *「木と森の雑学」鈴木啓三(グラフ社) *「葉っぱ・花・樹皮でわかる樹木図鑑」(池田書店) ]