感動樹木HP__樹木の見所 (14E20)

名称 フジ(藤)、 別名:ノダフジ
名前の由来:
 古代から藤のツルで藤布や縄、籠などを作っていたが、布織り作業の「経(たていと)を打つ」から経打(ふうち)となり、それが「フジ」に変化したとの説が有る。風に吹かれ散っていく花の姿から「フキチリ(吹散)」の略とする説、花を房状に垂れ下げて咲かせる様から「フサタリハナ(房垂花)」の意とする説、つる性で茎に節(ふし)があることから「フシ」の転とする説、フジつるを鞭にしたことから「ブチ(鞭)」が転じたとする説、中国のシナフジが紫藤と呼ばれていたことから、藤(フジ)と呼ばれるようになったとの説、など多くの説が有るが、万葉集以前の古い時代から既に「フジ」と呼ばれており、その名の由来について定説はない。
 別名ノダフジはフジの名所であった大阪市豊島区野田にちなんで付けられた呼び名。
分類  マメ科フジ属、  落葉つる性木本  
見所 *薄紫色の高貴な雰囲気の藤の花は古くから日本人の好みにマッチし、万葉集では26首に藤が詠まれているなど、多くの詩歌・絵画・舞踊などのテーマに取り上げられている。

*藤の花は神の降臨する依代(よりしろ)として神聖視され、家紋や様々な意匠などに使われている。また藤原・藤山・藤田・佐藤・齋藤・遠藤など多くの姓にも「藤」が使われ、日本文化の中で藤の存在は大きい。

*藤の花の花期は5月。蝶の形をした薄紫色の花が房のように多数集合し、長さ20〜100cmの総状花序をなして、枝先から多数垂れ下がる様は見事である。

*藤はその花の美しさと豪華さから、公園や庭園に植栽されることが多い。多くは藤棚を作り棚の上に蔓をはわせる。長さは1m近い藤の花房が藤棚一面に垂れ下がり咲き誇っている様は見応えがある。

*山野に自生する藤は他の樹木に絡みついて上方に成長している。杉などの大木に絡みつき樹冠いっぱいに藤の花が咲いている光景は、遠くからもよく見える季節の彩りである。

*藤はつる性植物として他の樹木に巻きつき、樹冠に広がって光を横取りし樹木の生育を妨げたり、幹を締め付けて枯死させたりするので、林業にとって藤はやっかいものである。一方、藤が巻きつくことで目立たない樹木に花木的な魅力が生まれ、藤と共生することで名木・古木になっている例もある。

*藤は観賞用樹木として優れているので、園芸品種も多数作られている。花序の長さが1m以上に長いものや、花の色にが白色のものもある。
代表的姿形 樹形:
 フジはつる性であるため、自らは直立できず、一定の樹形を形成できない。他の樹木に巻きついたり、人工的な藤棚により上方に展開する。時に幹の直径が数十センチの大型のものもある。
 藤棚の例



樹皮:
 若い枝は赤褐色で樹皮に菱形状の浅い裂け目摸用がある。成木は灰褐色で幹に複雑な凹凸が生じ、不規則な裂け目が入る。
葉:
 葉は奇数羽状複葉で互生し、長さ20〜30cm、11〜19枚の小葉が付く。小葉は長楕円形で長さ4〜10cm、先端はやや鋭く尖る。



実:
 フジはマメ科の植物であり、長さ10〜20cmのインゲン豆のような豆果を付ける。豆果は10〜12月に熟すと乾燥し、豆のさやが弾けて中から豆状の種子を飛び散らせる。
 垂れ下がった藤の豆果
花:
 花は両性花で、5月、枝先に長さ20〜100cmの円錐形の花房(総状花序)を出し、多数の蝶形の花を付ける。花弁の色は一般に藤色と呼ばれる紫色であるが、白色のものもある。
 紫色の藤の花


 白色の藤の花

分布 *日本固有種で、本州・四国・九州に分布する。
*日当たりの良い、やや湿り気のある林縁や明るい樹林内に自生する。山野では樹木に巻きつき生長する。
利用 *花が美しく見応えがあるので、藤棚を設けて公園や庭園に植栽される。鉢植や盆栽にも利用される。
*藤蔓(つる)は藤布や細工物の原料として使われてきた。現代でも藤蔓を利用した籠などの工芸品が有る。
*藤は若芽を茹でて和え物などに、花はテンプラにして食べることができる。花は塩漬けにして花茶にも使用される。
その他 *群馬県藤岡市、埼玉県春日部市、神奈川県藤沢市、静岡県藤枝市、青森県藤崎町、秋田県藤里町など20余りの市町村が藤を自治体の花に指定している。
*藤は他の樹木などに右巻き巻きつく。一方、関西以西の山野に自生している、藤の近縁種であるヤマフジは左巻きに巻きつく。
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