(127) 宮本武蔵が吊るされた
岡山県・佐波良の大杉
岡山県北部の山深い村に佐波良・形部神社と呼ばれる由緒ある神社があり、そこにはその神社の由緒の深さを物語る、佐波良の大杉と呼ばれる杉巨木がありましたが、知る人ぞ知る存在でした。ある時、その巨木がテレビドラマに登場し一躍有名になりました。

    

  (127-1) 佐波良・形部神社の鎮守の森
長い坂道を登り切ったあたりに一群の大木が群生する所があり、そこが佐波良・形部神社の鎮守の森でした。鎮守の森には大きな広葉樹もあり、訪ねた時には美しく黄葉し、遠くからもはっきりと森の存在を知ることができました。お目当ての佐波良の大杉は鎮守の森の端(下写真左端)に立ち、ひときわ高くそびえていました。
 
佐波良・形部神社は平安時代中期に編纂された「延喜式」にも記載されている由緒と歴史のある神社であり、鎮守の森も神社と同じ長い歴史を持ち、特別なものとして地域の人々に守り育てられてきたのでしょう。

  

(127-2) 6本の大枝からなる荒々しい樹形
佐波良の大杉に近付いて観ると、その樹形の異形さに唖然とさせられました。その杉は地上5m位のところから6幹に分かれ、まるで巨大なイカの足を逆さまに立てたような異様な樹形をしていました。しかも異様な樹形を誇示するかのように、鎮守の森の端に立ち、全体の姿をはっきりと見ることができました。
この杉は幹周り9.1m、樹高43m、推定樹齢900年余、岡山県で有数の杉巨木であり、真庭市の天然記念物に指定されています。上写真のように根元に安置された石の祠がミニチュアのように見える程です。

   

 (127-3) 武蔵が吊るされた杉巨木

 この大杉は2003年のNHK大河ドラマ「宮本武蔵」に登場して一躍有名になりました。
 「関ヶ原合戦から逃げ帰ってきた武蔵(市川新之助)は沢庵和尚に戒められ、この大杉につるされました。武蔵に思いを寄せる”お通”(米倉涼子)が縄を切って逃がす」と言う場面でした。
 左写真は現場にあった説明パネルを写したもので鮮明さは欠けますが、それでも画面中央部に吊るされた武蔵の姿が写っており、それと比較し杉の大きさが良く分かります。
 実際に宮本武蔵がこの杉の木に吊るされたのかどうかは知りませんが、そのようなことがあってもおかしくない、雰囲気と迫力をこの杉の巨木は持っています。

  

  (127-4) 並び立つスギとトチノキの巨木
 境内にはトチノキの巨木もあり、下写真のように2本の巨木が並び立っています。この写真において右奥が佐波良の大杉、左手前がトチノキ巨木です。2本の巨木が並び立ち、大きく手を広げて邪悪なものの侵入を防いでいるかのように見えます。
 
佐波良・形部神社の格式の高さを語るエピソードとして、「昔は神社周辺の田畑では牛馬を入れず全て人手だけで耕し、牛糞を使わず枯れ葉や草のみを肥料とするなど、神社周辺の神域を清浄に保つ努力が行われていた」そうですが、この並び立つ巨木はこの神社の由緒の深さと格式の高さを偲ばせる貴重な存在です。

  

   樹木写真の属性
 樹  種 スギ(杉)[ヒノキ科スギ属]
トチノキ(栃の木)[ムクロジ科トチノキ属]

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 樹木の所在地  岡山県真庭市社1271森の口 佐波良・形部神社 
 撮影年月   2018年11月
 投稿者  木村 樹太郎  
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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