(132) 幼いころの記憶を蘇らせる
大阪府・渋川神社のクスノキ
私が育った大阪府八尾市植松町は、古くは物部氏の領地だったようで、物部氏に関する数々の遺跡があります。自宅のすぐそばに渋川神社があり、そこは物部守屋の家の跡と伝えられています。小学生のころには神社で泥玉投げをして遊んでいました。また、毎年7月25日、26日には夏祭りがあり、太鼓台と呼ばれる大きな山車が2台出て、いまでも太鼓のリズムが頭の中に残っています。子供のころから、しめ縄のしてある大きな木が2本あることを知っていたのですが、今回写真を撮ってきましたので、紹介いたします。

  

 (132-1) 渋川神社

 左写真は本殿前の広場です。本殿では正月に、二人の巫女さんが笛と太鼓に合わせて舞っていて、優雅な雰囲気でした。右側にある建物は、子供のときは謎でした。鍵がかかっているので、縁の下の壊れたところから忍び込むと、板床になっていて、壁には彩色された絵がかかっていました。初詣、どんと焼き、節分、夏祭りなど、生活に密着した神社でした。
 渋川神社には大きなクスノキが2本あり、本殿の右側に見えるのがこれから紹介するクスノキAであり、本殿の背後、屋根の上に見えるのがクスノキBです。

  

  (132-2) 渋川神社のクスノキ巨木

下写真は渋川神社クスノキAです。樹高24メートル、幹周7.5メートルの堂々とした巨樹です。伝承樹齢は1000年とも1600年とも言われています。私が子供の頃は、しめ縄だけでしたが、樹の周りがきれいに整備されているのに驚きました。鳥居まであります。巨樹の前ではミニチュアの鳥居のように見えますが、これでも大人が立って通れる大きさがあり、クスノキの巨大さが良く分かります。
 

     

 (132-3) 大阪府の天然記念物

 左写真は少し離れたところから見たクスノキAの全景です。すらりと伸びた姿は、ズングリ形が多い楠の中では、稀に見る美形です。ただ、枝は子供のころの方がもっと茂っていたように思います。

 このクスノキは八尾市を代表する楠巨樹であるとして、昭和45年(1970年)に大阪府の天然記念物に指定されています。クスノキ巨樹のそばに「天然記念物 渋川神社の楠」と書いた石碑(左写真の中の小写真)が立っていましたが、石碑の文字も読みにくくなっており、50年近い年月の長さが感じられました。

  

 (132-4) もう一本のクスノキ巨木

 クスノキAの南側に、左写真の様に、もう一本の大きなクスノキBがあります。このクスノキも中々の大木で幹周が5.0メートルあり、八尾市の保存樹に指定されています。このクスノキのそばの小さな社は昔からありました。私が子供の頃は、周り一面は笹原だったのですが、いまは全くありません。夏の大掃除のとき、天井掃除に使う笹を取りに来たことを思い出します。

 クスノキBは樹の太さはクスノキAに負けるものの、枝振りはクスノキAより大きいように思えます。昭和36年(1961年)の第2室戸台風のときは、この樹の枝が家まで飛んできて大変でした。

 この度、久しぶりに渋川神社を訪ね、クスノキ巨木があるこの神社で遊んだ幼い頃から、50年余りという長い年月が過ぎていることが信じられない思いでした。私にとって気の遠くなるような50年余りの年月ですが、ここに千年余も生き続ける楠にとっては、極わめてわずかな年月であろうとも感じさせられ、悠久の時の中に生きるクスノキに対し、改めて畏敬の念が湧いてきました。

  

   樹木写真の属性
 樹  種 クスノキ(楠)[クスノキ科クスノキ属]

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 樹木の所在地  大阪府八尾市植松町3丁目3 渋川神社  
 撮影年月  2019年10月
 投稿者   浅野敏郎   
 投稿者住所  神奈川県横浜市栄区上郷町
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