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(154)満身創痍の老体で頑張る
出雲大社・命主社のムクノキ

出雲大社の東隣に命主社(いのちぬしのやしろ)と呼ばれる神社があります。建物はこじんまりとし目立たないのですが、その前に立つ物凄いムクノキの古木がこの神社が只者でないことを語っています。

  

 (154-1) 命主社の前に立つムクノキ古木

命主社(いのちぬしのやしろ)は出雲大社の境外摂社で、その存在を知る人は少ないのではないでしょうか。私が訪ねたときもお参りしている人を見かけませんでした。私もこの神社のことは何も知りませんでしたが、偶然前を通りかかったときに社殿前に立つ異様な雰囲気のムクノキ巨木に驚き立ち寄ったのです。
 
命主社のご祭神は神皇産霊神(かみむすびのかみ)と言われていますが、神社の由緒書きによると「神皇産霊神は天地万物の根本となられ、大国主大神(注:出雲大社の祭神)が危難に遭われた際には常にお護りされ国造りの大業を助成せらてた神です」とのこと。

 

 (154-2) 苦難の跡を示すムクノキ巨木

 このムクノキは幹周5.8m、樹高17m、推定樹齢1000年の立派な巨木で、命主社の御神木ともされていますが、近付いて良く見るとその姿の異様さに驚かされます。幹には深いしわと無数のコブがからみあい、ところどころ黒くなっているのは腐蝕を治療するために薬剤が塗られた跡でしょう。まさにムクノキ古木の満身創痍の姿であり、痛々しささえ感じます。

 しかしこれを単に奇怪な古木として見るのではなく、大国主大神を助け進めた国造りが平坦な道ではなく、多くの困難や苦難を乗り越えたものであることを語っていると思うとき、この奇怪なムクノキ巨木に深い味わいがあります。

 

 (154-3) 大見えを切るかのようなムクノキ巨木

 さらに良く見るとこのムクノキ巨木には2m近い著しい根上が生じていることに気付きます。昔は小山の上に立っていたのが小山が失われたのか、あるいは地下に岩盤があり地中に根が十分育たなかったのか、原因はいずれであるにせよ、大きく根上りしていることがこの木の奇怪な樹形を一層強めています。
歌舞伎役者の様に大きく足を踏ん張り「命の限り大国主大神の国造りをお助け申す」と大見えを切っている様にも見えます。
このような命主社の存在は出雲大社にとっても非常に重要であり、社の由緒書きによれば
「元旦の朝には出雲大社の大御祭に引き続き、国造以下神職参向の許、厳かに祭典が斎行されます」とのことです。
ムクノキ巨木のおかげで由緒深い神社の存在を知り、出雲大社の理解を一段と深めることができました。

 

   樹木写真の属性
 樹  種 ムクノキ(椋の木)[ニレ科ムクノキ属]
 樹木の所在地 出雲市大社町杵築東字森182
 撮影年月  2013年5月
 投稿者  木村 樹太郎   
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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