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 (162)道路の真ん中に鎮座する
文京区・善光寺坂のムクノキ巨木

東京都文京区の善光寺坂に道の真ん中に立つムクノキ巨木があると知りました。このような驚くような所に立つ巨木は何か語りかけるものを秘めているもので、会ってみたくなる樹木です。

 

 (162-1) 突然、道の真ん中に巨木が

 善光寺坂と呼ばれる長い坂道を登っていくと突然目の前に大きな木が現れ驚かされました。私は徒歩で訪ねたのでまだ良かったのですが、自動車に乗ってここを訪ねる人は、突然道が無くなったように感じ驚き戸惑うことでしょう。

 道の真ん中に立っているのは推定樹齢300余年、幹の直径1m余りのムクノキ(椋木)巨木です。

 

  (162-2) 車がやっと一台通れる幅の道
坂の上の方から見るとこの巨木が立っている状況の異常さはもっとはっきりします。
巨木の片方だけに車がやっと一台通れる車道があり、他方は歩道のみです。ここで車が鉢合わせしたらどうなるのか?
 
以前は道の真ん中のムクノキの両側が車道だったそうですが、それではムクノキ巨木にとってあまりに厳しく傷みも激しいと言うことで、比較的最近、写真の様に木の下に小緑地帯を作り、車が通れる道は片側のみとなり、もう一方の側は歩道のみとして現在の姿になったそうです。

  

 (162-3) 傷みが激しいムクノキ巨木

 幹は中々に立派なムクノキ巨木ですが、上を見上げると驚きました。傷みが激しく地上5m位のところで主幹は失われ、空洞もでき、何本ものワイヤーでささえられやっと立っているありさまです。 このような状態でなお道の真ん中に立っておれるのはよほど何か曰くがあるのでしょう。

 地域の伝承によると、
「ムクノキがある坂を更に少し上ったところに由緒ある伝通院がある。ムクノキが立っているあたりは昔は伝通院の寺領であった。江戸時代、伝通院の学寮で修行した澤蔵司(たくぞうす)という僧が修行の恩返しに寺内に稲荷を祀り、御神木としてムクノキを植えたとされている。時を経てムクノキは稲荷の境内から切り離され、邪魔者として何度も切り倒されそうになったが、その都度切り倒そうとする者に不慮の事故が続き伐採を逃れてきた。いつしかこのムクノキには植えた僧の怨念が宿るとして恐れられ、だれも切ることが出来なくなった」と聞く。

 


 

  (162-4) 樹木を慈しむ心の現れ
帰りがけ後ろを振り返ってみたら、来た時とはまた違った光景が目に入ってきました。ムクノキ巨木から少し離れた所の歩道の真ん中にもう一本の大木(ユリノキ)が立っていることに気付きました。
ムクノキ巨木により樹木を慈しむ心が培われ、ユリノキ大木が歩道の真ん中に立ち続けることを、地域の人々が受け入れているのでしょう。
 
私自身、最初にこのムクノキを見たときは「なぜこんな交通の邪魔になる所に?」という否定的な気持ちでしたが、ムクノキ巨木の生きざまに触れ、巨木の大きな包容力に包まれている内に巨木に対する畏敬の念が湧き、「会えてよかった。頑張れよ!」との気持ちを胸に帰途につきました。

  

   樹木写真の属性
 樹  種 ムクノキ(椋木)[アサ科ムクノキ属]
(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地 東京都文京区小石川」3-17-12
 撮影年月  2021年10月
 投稿者  中村 靖   
 投稿者住所  横浜市都筑区中川中央
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