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(171)過疎化進む集落に立ち続ける
安芸高田市・出店権現のウラジロガシ

広島県の山中の集落に「出店権現のウラジロガシ」と呼ばれるカシの巨木が有ると知り、その名前からなんとなく賑やかな話題豊富な樹木を連想して見に行きたくなりました。

  

 (171-1) 人気のない出店権現社
ウラジロガシ巨木が有ると聞く出店権現社を訪ねてみると、境内には枯れ葉がいちめんに散り敷き、説明の掲示板はこわれ、寂れた雰囲気の所でした。
中国山地の村々は過疎化が言われて久しく、増えるのは空き家と廃屋ばかりの状況ですから、神社だけ昔の姿を期待するのは無理な話でしょう。
 
こじんまりとした社殿はしっかりと戸を閉ざし近寄りがたい雰囲気を醸し出していましたが、社殿の前にはそれらしい大木が立っており、ここが由緒ある場所であることを伺わせていました。

 

(171-2) 寄せ植えされたウラジロガシ
 本殿の前に立つ大木は根元から大きな枝が5,6幹に分かれており、カシの木と言うよりはスダジイの雰囲気を漂わせていました。一般にカシの木は単幹ですらりと伸び、このように幹の下の方から大枝が多数分枝することは無いからです。説明掲示板によると、これはむかし、献木をする際に5,6本のウラジロガシの苗木を寄せ植えにし、生長につれ合着したものとみられています。
 寄せ植えされることは木の生長にとっては良い条件ではありませんが、献木した木がもし枯れる様な事が有っても、一本でも無事育ってほいいとの願いがこもっているのでしょう。
このウラジロガシは困難な状況を良く克服し立派な大木に育ちました。幹周7.5m、樹高20m、樹齢は分かりませんが木の状態から見て数百年は有るでしょう。ウラジロガシとしては有数の巨木であり広島県の天然記念物に指定されています。

  

 (171-3) 葉の裏が白いウラジロガシ

 葉を取ってみると左写真の様に葉の裏は白く、間違いなくウラジロガシ(裏白樫)です。 日本に自生するカシ類の木としては、シラカシ、アカガシ、アラカシ、ウラジロガシなど9種ありますが、ウラジロガシはこの地方ではポピュラーな樹種です。

 カシ(樫)類はその字が示すように材質が非常に堅く丈夫であることから、剛健や強固を願って神社に献木されることがあると聞きます。

(写真中の丸いものは大きさを比較するための五円玉(直径2.2cm))
 

 

 (171-4) 大きな藤ツルが巻き付く
 ウラジロガシの木から5,6m離れた所に大きなフジ(藤)の木があり、その先はウラジロガシの枝に巻き付いていました。神社のカシの木にフジが巻き付き共生している姿を他でも見たことが有ります。
一般にカシの木類は目立つ綺麗な花は咲かず、また常緑樹ですから紅葉もなく観賞価値が低いので、綺麗な花が咲くフジ等巻きつかせて観賞価値を高めることがしばしば行われますが、このウラジロカシも人間の身勝手により藤蔓に巻きつかれ負担を強いられてきたようです。沢山ある大枝の内で藤蔓が巻きついている数本は勢いが悪く、枯れかけている枝も見られました。

 

 (171-5) 過疎の集落に立ち続けるウラジロガシ

 写真撮影を終わり車を置いた集落の空地まで戻り、後ろを振り返るとすぐ近くにウラジロガシが立っているのが見えました。
 神社とウラジロガシについて地域の人に話を聞きたいと周りを見渡しても人影もなく、集落は静まり返っていました。過疎化が進み寂れる神社に立ち続けるウラジロカシが哀れに思われました。

 しかし、もしウラジロガシが喋れたら「長年かけて大木になり、私を植えてくれた人の願いに答え、藤と共生して毎年綺麗な花を付けて人々を楽しませ、私なりに一生懸命がんばってきました。過疎化が進み人とのかかわりが少なくなると言うならば、それはそれで一向に構いませんよ」このように言うかもしれません。
 

 

   樹木写真の属性
 樹  種 ウラジロガシ(裏白樫)[ブナ科コナラ属]
 樹木の所在地 広島県安芸高田市美土里町生田出店原 出店権現社 
 撮影年月  2022年3月
 投稿者  木村 樹太郎
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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