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 (172) 文化交流の先駆けとなる
横浜・コリア庭園のサンシュユ

横浜市鶴見区の三ッ池公園の一角にコリア庭園と言うのが有ります。これは神奈川県と韓国・京畿道との友好提携(1990年4月)を記念して、県民が朝鮮半島の文化への関心と理解を深める等の場となるよう整備されたものです。訪ねてみると、樹木が文化交流の先駆けとなっていることを知りました。

 

 (172-1) 入口に立つ見なれない彫像

 コリア庭園は李氏朝鮮時代の豪族の庭園をモデルに作られたものであり、前苑・前庭・主庭・後庭・後苑からなる立派な庭園です。

 まず前苑に立つ風変りなトーテムポールの様なものに驚かせれました。大きい方には「天下大将軍」小ぶりな方には「地下女将軍」と書かれていますので、なんとなくその意味は分かりますが、これまで見たことがないものなので入口からカルチャーショックを受けました。

 門の前あたりが前庭ですがここには周辺の気を集めるとされるエンジュの木が植えられており、興味深く見ました。

  

  (172-2) 広々とした主庭
門をくぐり中に入ると主庭が広がっています。建物の前には平らな広い空間が広がっており、和風の庭園とはかなり異なる雰囲気です。写真右下に見える楕円形の盛り上がっている部分は、長寿の代表とされる亀を形取った小築山で「亀形山」と呼ばれています。
 
説明掲示板によりますと、李氏朝鮮時代の庭園には100種を超える色々の草木が植えられていたようですが、特に長寿を象徴する松・竹・梅・菊・蘭の中で四種を選びこれを「四友」と称して庭園の主な所に植えられたそうです。松竹梅は日本でもなじみが深いものであり親しみが湧きます。

  

 (172-3) 屋外に多数の甕が並ぶ

 後庭に来てみるとそこには大小の甕(かめ)が沢山並ぶ見なれない光景にビックリ。これは朝鮮語でチャントッテとよばれるもので、醤油や味噌や漬物などの食品を保存貯蔵する場所とのこと。屋外に多数の甕を並べ保存する習慣は日本では見たことが無いのでこれまたカルチャーショックを受けました。
 おちついて周囲を観ると脇に黄色い花を咲かせている樹木が有り、近ずいて見るとサンシュユでした。サンシュユは日本でも良く見かける花木ですので、韓国・朝鮮にもサンシュユがあるのかと、すこし親近感を感じカルチャーショックから立ち直りました。

  

  (172-4) 文化交流の先駆けとなるサンシュユ

 サンシュユは春の鮮やかな黄色い花から「春黄金」と呼ばれ、秋に宝石のように赤く輝く実から「秋サンゴ」とも呼ばれ、日本では多くの場所で植栽され親しまれています。見なれたサンシュユ側からチャントッテを見ると、先ほどの違和感は無く、日本のどこかにも有りそうな風景に見えてきました。
 
家に帰ってサンシュユのことを調べてみたら、サンシュユは中国北部・朝鮮半島の原産で、日本には江戸時代中期(1730年頃)に伝来した樹木であると知りました。サンシュユは韓国・朝鮮の方が本家だったのです。古くに伝来し日本でも定着しているサンシュユが、朝鮮半島の文化理解と交流の先駆けとなっていたのです。

 

   樹木写真の属性
 樹  種 サンシュユ(山茱萸)[ミズキ科サンシュユ属]
(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地 神奈川県横浜市鶴見区三ッ池公園1-1
 撮影年月  2022年3月
 投稿者  中村 靖   
 投稿者住所  神奈川県横浜市都筑区
 その他