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(174)　「花と言えば桜」に”待った”をかける 横浜・国際プールのツツジ 「花と言えば桜」と世間では言われていますが、本当にそうでしょうか。日本の1700余りある自治体はそれぞれの自治体のシンボルとなる花を制定していますが、圧倒的に多数の自治体は桜よりツツジを選定しています。これは何を意味するのでしょうか。 横浜市の国際プールでも素晴らしいツツジ景観を観ることができます。これを観ると日本には桜以外にも素晴らしい花木が有ることを納得いただけるのではないでしょうか。

(174-1)　斜面に広がるツツジ景観 岡の上にある横浜国際プールに登る長い階段（「百段階段」と呼ばれている）の両脇にツツジが広がり、花の時期には絶好のツツジ・ビュースポットとなり、桜に負けないスケールの大きな花木景観を生み出しています。

近くの地下鉄駅からこの階段に至る陸橋（「夢逢歩道橋」と呼ばれている）の上から見ると、色とりどりのツツジの花が咲き誇る景観は壮観です。

(174-2)　まじかにツツジを観る 　斜面を半分くらい登ると周りをツツジに取り囲まれ夢見心地の良い気分となります。後ろを振り返ると、さきほど渡ってきた夢逢歩道橋がずいぶん下の方に見え、その上を歩く人も米粒の様に小さく見え、空間の広がりを肌で感じられます。

これだけの大面積のツツジ植栽で最も難しいのは、花を一斉に咲かせることでしょう。どんなに色とりどりの沢山のツツジを植えても、開花時期がバラバラでは劇場性が高まりません。そのためにここに植栽されているツツジは限られた種類に揃えられていると思われます。

(174-3)　平戸つつじ3品種 　近ずいて見ると、ここに植栽されているツツジは「平戸ツツジ」と思われます。平戸ツツジはツツジ類の中でも最も大輪（花冠の直径が6～10cm）の花を咲かせ見事です。さらにここでは左写真の様に3種類の平戸ツツジが植えられ色彩豊かな樹木景観が生み出されているようです。 　左上写真は’大紫（オオムラサキ）’で平戸ツツジのベースになる品種ですが、濃い紫色がシックな景観形成をしています。 　左中写真は’曙（アケボノ）’と呼ばれる品種で、’大紫（オオムラサキ）’の枝変わりから作出されたとされています。明るいピンク色と濃い赤紫色のブロッチの組み合わせで軽快な樹木景観を生み出します。 　いま一つ左下写真は’白妙（シロタエ）’と呼ばれる品種で、’曙（アケボノ）’の枝変わりから作出されたとされています。透き通るような真っ白の花色は景観に清々しさを加えます。 　この色の異なる3品種を巧みに配置して色彩豊かなツツジ景観が作られていたのです。しかもこの3品種は花の色は異なっていても開花時期などの特性は同じですから、色の異なる多数のツツジが一斉に花を咲かせ色彩豊かでスケールの大きい花景観が生まれていたのです。桜のソメイヨシノによって作られる均一の花景観では生み出せない景観です。

(174-4)　ツツジの枝変わり？ 　平戸ツツジは樹高1～2mの低木ですから、人の背丈くらいの位置に大輪の花を咲かせます。平戸ツツジは遠くから花景観を楽しむだけでなく、近付いて仔細に花の魅力を楽しむことができます。 　ここでも更に近付いて良く見ると、左写真の様にピンク色の’曙（アケボノ）’の中に所々にポツンと違う色のツツジが有ることに気付きました。植栽する人がわざとこのようにすることは考えにくいので、これは違う品種の苗が交じり込んだのか、あるいは枝変わりが生じているのかもしれません。枝変わりか否かは根元を確認すればわかるのでしょうが、植栽の中に入り込むことは出来ませんので確認は出来ませんでした。 　一般に平戸ツツジでは枝先に1～3輪の花が咲きますから、数輪の花の色がポツリと異なる場合には枝変わりである可能性が高いように思います。多くの園芸品種を生み出している枝変わりの現象が、目の前のツツジでも起こっているのは大きな驚きです。

(174-5)　ツツジの海に浮かぶ街並み 　岡の上まで上がって振り返ると一面に咲き誇るツツジの花に浮かんでいるように街並みが見えました。お花見で観た桜が作り出す景観では見たことが無い、これもまた素晴らし花景観です。

桜の花が散り、お花見の喧騒が鎮まったころ、まるで「花と言えば桜」に待ったをかけるかのように咲き誇るツツジです。この国際プールのツツジの様な素晴らしいツツジ・ビュースポットが日本各地にあることでしょう。このツツジ・ビュースポットを観れば、桜に勝るとも劣ることのない花木が有ることに大きな喜びを感じます。