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(176)地球温暖化に警鐘を鳴らす
東京・国立自然教育園のシュロ

東京都港区の都会の真ん中に国立自然教育園と言うのが有ります。ここは草木をできるだけ自然のままに育てて教育学習に供する場として、大都会の中に貴重な原生林をとどめる公園です。ここでは樹木の自然な姿を観ることができるとともに、現在心配される地球温暖化が樹木にどの様な影響を与えるかを知ることもできます。

  

 (176-1) 原生林の様な自然教育園
大小の高木、低木が生い茂り、ここはまさに大都会の中に残された貴重な自然です。園内の散策道は鬱蒼と茂る木に覆われていて原生林の中に迷い込んだ感じです。
 
樹齢数百年以上と思われる大木がそこかしこに立っていますが、特にスダジイ(すだ椎)とクロマツ(黒松)の大木が目に着きます。

 

 (176-2) 昔の庭園のなごりの黒松

 この自然教育園は江戸時代には高松城主松平讃岐の守の下屋敷であったところであり、園内には所々にその名残をとどめる樹木もあります。

 左写真は「物語の松」と呼ばれる松の老木ですが、その枝ぶりから見て自然性の松ではなく、かつては庭園の主要植栽として良く手入れされ、見事な枝ぶりを見せていた松でしょう。この松の近くにはヒョウタン形をした池も有り、昔はこの松の木を含めた回遊式の庭園であったことが伺われます。

 人の手が加わらなくなってもいつまでも痕跡をとどめながら樹木は大きくなることを示しています。

 

 (176-3) 根倒れになったシンボルツリー「おろちの松」
 かつてこの教育園には幹回り4m、樹高33mの黒松の巨木が有りました。この松が高くそびえるさまは山手線の車窓からも良く見え、太い幹が上空高く伸びる姿は大蛇が天に昇る様を連想させ「おろちの松」と呼ばれていました。
しかし、惜しいことに1979年10月の台風20号のとき落雷の被害を受け、幹は地上8mの所で折れてしましました。その後も松は存続し、自然教育園のシンボルツルリーとなっていましたが、2019年10月の台風19号で根元から倒れてしまいました。倒れた松は教育的観点からそのままの姿で残され、上え写真の様に横たわっています。

 

 (176-4) 亜熱帯植物シュロが繁茂する自然教育園

 東京自然教育園で最も印象的なことは、地球温暖化によるシュロの繁茂ではないでしょうか。

 左上図はこの百年間の地球平均気温と東京都心部の平均気温の変化を示しています。地球平均で気温上昇が075度であるのに対し、東京都心部ではヒートアイランド現象も重なり気温の上昇は3.02℃にもなっています。このすさまじい温暖化により亜熱帯植物であるシュロの繁茂が顕著です。

 自然教育園は樹木の生育状態を極力自然のままに展示するのが目的の教育施設であり、ここでのシュロの生育本数の推移を見ると、
1965年は3本であったものが
1997年に855本、
2010年に2324本、
と、この50年足らずの間に700倍に急速にその本数を増やし、左下側の写真に見るように亜熱帯の密林を思わせる景観を呈しています。

 地球温暖化を放置すればやがて日本列島はシュロやヤシの木に覆われることを示しています。
 

  

   樹木写真の属性
 樹  種 シュロ(棕櫚)など[ヤシ科シュロ属]
 樹木の所在地 東京都港区白金台 国立自然教育園
 撮影年月  2021年10月
 投稿者  中村 靖   
 投稿者住所  横浜市都筑区
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