(76) 過疎高齢化の農山村を彩る
晩秋の「新・残し柿」

この地方の農山村ではほとんどの家の庭先や畑に柿木が植えられており、代表的な秋の味覚として人々を楽しませてきました。その場合でも、全部の柿の実を取ってしまうのでなく、小数を残す習慣がありました。残された柿の実は「残し柿」あるいは「木守柿」と呼ばれ、これは神へのお供え、柿木への感謝、他の動物達への贈り物、等の意味がありました。

しかし過疎高齢化が進む農山村では、柿を取ったり食べたりする人が年々少なくなり、最近では柿の実のほぼすべてが晩秋になっても収穫されず残っている状態です。この様なほとんどの実が残っている状態は「残し柿」とは呼べないかも知れませんが、ここでは「新・残し柿」と呼んでその魅力を紹介します。

    

(76-1) 鈴生りの柿の実

 11月中旬ころ、紅葉した柿の葉が散ると、後に残った柿の実が良く目立ちます。この時期になると柿の実もきれいに熟し、鈴なりのオレンジ色の柿の実が、晩秋の光を受けて輝く様子は感動的です。

 このお宅では庭の柿木が屋根より高くなってしまいました。実を取ったのは下の方のごく一部で、大部分は「新・残し柿」になってしまったようです。
 
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 遠くから見るとオレンジ色がとてもきれいですが、近付いて見ると一つ一つの実がよく熟し、とてもおいしそうです。

 「うまげな柿がよーけーなっとるが、高こうて取れん。ウーン残念!」と所有者が言っているように見えます。

  

  (76-2) 枝が折れそうな柿木
 
  こちらの柿木はたわわに実った柿の実で枝が折れそうです。「早く取ってくれー」と叫んでいるようです。
耕作放棄地が年々増えている状況では、柿の実だけきちっと収穫することはもはや無理なことでしょう。
紅葉も散り、花も少ない晩秋から初冬の時期、鮮やかな彩りを添える「新・残し柿」は、農山村の新しい感動的な樹木景観です。

  

(76-3) 路傍の小さな柿木

 この路傍の小さな柿木にも、鈴なりの「新・残し柿」がありました。子供でも手の届くようなこんな柿木は、昔は子供たちの格好の狙い場所となり、いつのまにか全部食べられてしまったものです。今では誰も取る人がいないのでしょう。
 そういえば、この近くの小中学校が廃校になってから、ずいぶん年月が過ぎ去っているように感じます。

    

  (76-4) 廃屋の庭に立つ柿木
 
  廃屋の庭に立つこちらの柿木はテッペンまでクズマカズラで覆われてしまいました。それでも柿の木は頑張り、今年も沢山の柿の実を付けています。柿の実を取る人がいなくなってから何年になるのでしょうか。この先何時まで柿の木は頑張れるのでしょうか。
過疎高齢化の村の悩みを象徴するような柿木の姿です。

  

(76-5) 綿帽子をかぶった新・残し柿

 秋も深まり初雪が降ると、あたり一面銀世界になり、オレンジ色の「新・残し柿」が一段と色鮮やかです。
 柿の実も白い綿帽子をかぶり気取っているように見えます。

  

  

   樹木写真の属性
 樹  種  カキノキ [カキノキ科カキノキ属]

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 樹木の所在地  島根県邑智郡川本町 
 撮影年月   2014年12月、2015年11月
 投稿者  木村 樹太郎 
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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