(89) 一本の樹が生み出す森
山口・川棚のクスの森
山口県下関市に「川棚のクスの森」と呼ばれる森があります。森はその字が示すように3本以上の沢山の木が集まってできていますが、「川棚のクスの森」は1本の楠でできた森だそうですから尋常ではありません。樹木ウオッチャーならずとも興味をそそられ、会いに行かずにおれません。

  

  (89-1) 森のような1本のクスノキ
 
駐車場に車を止め見上げると丘の上にこんもりと茂るクスノキの森が見えます。
しかし近づいてよく見ると、天を覆い尽くすように枝を繁らせた一本のクスノキの巨樹が現れ、また少し離れて見ると、一本の樹でありながらまるで森であるかのように見え、まるで「だまし絵」を見ているようです。
幹周:11.2m、樹高:27m、推定樹齢1000年以上、四方に伸びる枝は東西58m、南北52mもあり、日本3大樟樹に数えられています。

  

 (89-2) 空お覆うクスノキの枝葉

 さらに近付いて空を見上げると、クスノキの枝葉が空を覆いつくし、森の中に入ったようです。そしてそのすべての枝が1本のクスノキの幹から出ていることを目の当たりにすると、改めて「森」と呼ばれるこのクスノキのスケールの大きさに感動させられます。

 

  (89-3) 飛び枝
 
このクスノキには「飛び枝」と呼ばれる面白い枝があります。長く水平に伸びた枝が地面に着き、そこから根が出て長い年月経って別の木であるかのように分離した枝です。
このクスノキの豊かな枝張りと長い樹齢を物語る珍しい現象です。

  

 (89-4) 種田山頭火も感動

 俳人・種田山頭火は昭和7年にこの地を訪れ、3句を残しています。

 「大樟の枝から枝へ青あらし」
 「注連を張られ樟の森といふ一樹」
 「大樟の枝垂れて地にとどく花」

 大樟に抱かれるように句碑が立っています。 

  

  (89-5) クスの森に祈る人
 
「クスの森」に向かって手を合わせる人がいました。(写真右下)  国家安泰を願うのか。子供の健やかな成長を願うのか。意中の人と結ばれることを願うのか。
枝を空いっぱい伸ばし、あらゆるものをやさしく包み込むかのような「クスの森」は、どんな願い事もかなえてくれるように思われました。

  

   樹木写真の属性
 樹  種  クスノキ(楠) [クスノキ科ニッケイ属]

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 樹木の所在地  山口県下関市豊浦町大字川棚字踊場   
 撮影年月   2016年8月
 投稿者   木村 樹太郎   
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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