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 (138) 新型コロナウイルスの退散を祈る
厚木市・妻田薬師の大楠

昔から「お薬師さん」は病気平癒や疫病退散で御利益があるとして、人々の篤い信仰を集めてきましたが、神奈川県下第一の大楠を擁する妻田薬師が厚木市にあると知り、新型コロナウイルス退散を祈るため訪ねました。

 

 (138-1) 門前で手を合わせる人

 妻田薬師は周囲を住宅と田畑に囲まれた郷中にありました。山門には「白根山妻田薬師」の看板ががかかっていましたが、写真に見られるように山門にしめ縄がかけられており、お寺なのか神社なのか?
 
 写真を撮っていたら通りがかりの人が社殿に向かってしばし手を合わせる姿も見られ、この薬師は地域の人に親しまれ崇敬されていることが伺えました。

 山門の横に巨木が見えますが、これは落葉樹ですからお目当ての楠ではありません。

 

  (138-2) あたりを圧する楠巨樹
山門をくぐり境内に入ると薬師堂わきの楠巨木が目に入ってきました。鐘楼に覆いかぶさるように、あたりを圧して立っていました。三角形に裾が広がりどっしりと立つその姿は、見る人を驚かせ感動させます。
この楠は樹高22m、幹周り11m、推定樹齢500年の巨樹です。楠巨樹は九州・四国地方には非常に多いのですが、関東地方には少なく、これだけの巨樹は非常に貴重です。県下第一の楠巨樹として、神奈川県指定天然記念物になっています。
 
クスノキ(楠)は非常に長寿の樹木で、日本の代表的な巨樹のほとんどは楠ですが、体内に樟脳の薬成分んを含むことからその名は「薬の木」が転じてクスノキになったと言われています。薬とその効果を目に見える形で示すクスノキは、薬師との相性が非常に良い樹木といえるでしょう。

  

 (138-3) 楠巨樹の根元に巨大な空洞

 遠目には樹勢盛んな楠ですが、近づいて見ると根元に巨大な空洞があり、二度ビックリさせられます。その空洞は人の背丈ほどになり、中は畳二枚くらいの広さの空間が出来ています。幹のほぼ半分が失われており、これで良く巨体が支えられているなと改めて驚かされます。

 むかし(1560年頃)武田信玄が小田原城攻めを行った帰路、ここの社殿に火を放ち、その時の火災でできた傷がもとでこの楠の空洞ができたとの言い伝えがあります。

 空洞の中には高さ50cmくらいの石のお地蔵さんが安置されており、新しい花も供えれれており、信仰の対象になっているようです。

 

   (138-4) 楠に向かって手お合わせる人
 下写真のように楠に向かって手を合わせる人の姿がありました。家族の病気治癒を願うのか、新型コロナウイルスの退散を願うのか?
薬師如来像は薬師堂の中に安置されているのでしょうが、楠巨樹は薬師堂わきに立って何時でもだれでもが会うことが出来る存在として、妻田薬師のシンボル的存在となり、地域の人々の信仰の対象となっているのでしょう。
 
薬を授けて衆生の病苦を救う薬師如来と、薬効を得て巨樹になる楠が会い揃い、病気や疫病に関する願い事は必ずかなえて頂けるとの希望が湧いてくる妻田薬師です。

   

   樹木写真の属性
 樹  種 クスノキ(楠)[クスノキ科クスノキ属]

(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地  神奈川県厚木市妻田3-17-32  
 撮影年月   2020年3月
 投稿者   中村 靖   
 投稿者住所  横浜市都筑区中川中央
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