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 (142) 見えない内面を顕にする
対馬・和多都美神社の龍松

長崎県対馬に古事記にも登場し龍宮伝説や海幸彦・山幸彦伝説の発祥の地である和多都美神社があり、訪ねました。そこで意味深長な松の大木に出会いました。

 

 (142-1) 海につながる和多都美神社

 和多都美神社は 山幸彦・海幸彦の話で山幸彦ゆかりのお宮です。このお宮は境内も半分くらいは海に囲まれ、五つある鳥居のうち二つは左写真に示すように海の中にありました。伝説の「竜宮」もかくやと思わせる雰囲気を漂わせていました。

 神代の昔、海神である豊玉彦尊(とよたまひこのみこと)が当地に宮殿を造り、宮 を「海宮」(わだつみのみや)と名付けました。 ご祭神は「彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)・・・山幸彦)と「豊玉姫尊(とよたまひめのみこと)」の夫婦の神であると伝えられています。

 

  (142-2) 歴史を感じる松大木
ある時、山幸彦は兄:海幸彦から借りて失った釣り針を捜して上国より下向し、この宮に滞在すること3年、そして豊玉姫をめとり妻とした。海幸彦・山幸彦の伝説は当地から生まれました。
 
和多都美神社境内には上写真のように数本の松があり、特に拝殿横に立つ一本はひときわ大きく、枝にはコケがビッシリ付き、年代を感じさせる古木です。

  

 (142-3) 地表を長々と這う松の根

 拝殿横にある大きな松 この松の大きな根が左写真のように地中ではなく 龍のように地上を這っている事に驚きました。根が龍のように地上を這っていることからか「龍松」(ただし読みは「たてまつ」)と呼ばれています。

 ガイドさんの話によると 神社の周囲が海で地中も塩分が濃く そのため地上を這っているのだろうと言っていました。

 しかし地中の塩分が原因なら他の根はなぜ地表に現れていないか? また三保の松原など海岸に立つ松は多いけれども、根が地上に伸びている松は他の地では見られないのはなぜか? 本来なら見えない根を、これほど顕にしていることに対し、もっと深い意味があるのではないかと、疑問が深まりました。

  

  (142-4) 深い意味を持つ?龍松
海幸彦・山幸彦の伝説には次のような下りがあります。
「豊玉姫尊が産屋に入り子供を産むとき、山幸彦(彦火々出見尊)に『決して産屋を見ないでください』とおっしゃった。しかし山幸彦は産屋を覗いた。 豊玉姫尊は元の鮫の姿で出産をしていた。秘めていた自分の姿を見られた豊玉姫尊はこれを恥じて 海に帰って行った。」
この逸話は人は目に見えている外面だけでなく、深い内面を持っている事を語っているように感じられます。
 
本来なら地中にあって見えないはずの根が地表を這う「龍松」が、この和多都美神社にあることは単なる偶然ではなく、和多都美神社にまつわる龍宮を連想させるか、あるいは海幸彦・山幸彦伝説の深い意味を示唆するか、いずれにしろ人が介在してできたものに思えてなりません。

  

   樹木写真の属性
 樹  種 クロマツ(黒松)[マツ科マツ属]

(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地  長崎県対馬市豊玉町仁位字和宮55  和多都美神社  
 撮影年月  2020年2月
 投稿者  ①森本 眞一
 ②中村 靖   
 投稿者住所  ①山口県山陽小野田市
 ②神奈川県横浜市都筑区
 その他