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 (152) 神秘的なカツラ(桂)の木を象徴する
雲南市・海潮のカツラ

カツラ(桂)の木はその樹形や花の特徴など神秘的な樹木ですが、島根県雲南市にある「海潮(うしお)のカツラ」は海から遠く離れた山中にありながら、なぜ海潮のカツラなのか?名前からして謎めいており訪ねて見たくなる樹木です。

 

 (152-1) 海から遠く離れた地に立つ海潮のカツラ

 「海潮のカツラ」は海から遠く離れた山中にありながら、なぜ海潮のカツラなのか?素朴な疑問がわきますがこの謎はすぐ解けました。

 昔この地には塩分濃度が高い温泉がわきだし海潮温泉と呼ばれ、地域は海潮村となりました。昭和12年(1937年)にこのカツラが国の天然記念物に指定されたとき、「海潮村のカツラ」と名付けられましたが、その後の町村合併で海潮村がなくなり、カツラも「海潮のカツラ」と呼ばれるようになったそうです。

 目指す「海潮のカツラ」は、中国山地の山間に建つ日原神社の参道わきに左写真の様に立っていました。少し離れた所から見るとそこには多数の木が茂っているだけで、巨木があるようには見えませんでした。

 

  (152-2) 巨大な株立ちのカツラ巨樹
巨木があるようには見えなかった参道ですが、近づいてよく見ると藪のように見えた多数の木は根元で合体し、巨大な株立ちの木が見えてきました。幹回りの長さは20m余にもなり、その巨大さに驚かされました。
カツラの古木は往々にして、まるで人が円形に植え育てたのではないかと思われるような、巨大な円形の株立ちの樹形になりますが、海潮のカツラはそのようなカツラ巨木の代表例と言えるでしょう。
 
カツラは根元からヒコバエ(孫生)が育ちやすい樹木で、樹齢数百年のカツラ大木がなんらかの原因で倒れると、元あったカツラ古木を取り囲むように一斉にヒコバエが育ち、やがて数百年が過ぎると巨大な株立ちのカツラ巨樹になるのです。
多数のカツラ大木がきれいに丸く並んだカツラ巨樹を見ると、なにか神秘的な力を感じさせられます。

  

 (152-3) 神秘的な花を咲かせるカツラ

 カツラ(桂)は雌雄異株でその花には花弁も萼も無くj地味ですが、小さい紅紫色の花(実際は雄蕊だけ、あるいは雌蕊だけ)を無数に咲かせます。春先3月末頃わずか数日間、左写真の様に木全体が紅紫色に燃え立つように花をつけるさまは感動的です。これもまたカツラの神秘性を高める現象といえるでしょう。

 また、カツラは広葉樹でありながら、その樹形は下写真の様にスラリと高く伸び、高いものは樹高30m余になります。このスマートさもカツラ人気の大きな要因でしょう。

  

  (152-4) 葉にも神秘性が宿る
カツラは葉にも神秘的な魅力があります。ハート形をしたカツラの葉に霊力が宿るとして、京都の葵祭の飾り物「葵桂」にカツラが使われていることは良く知られていることです。
そして秋になると淡い黄色に染まる黄葉も魅力的です(下写真右側)。カツラの落ち葉からは神秘的な芳香が漂い、最後の最後まで人の心をとらえて離しません。
 
カツラ(桂)はいろいろな神秘的な魅力を秘め、古くはタタラ製鉄の神の御神木として崇められ、昭和初期には「愛染桂」の悲恋物語が映画全盛時代の一世を風靡し、最近ではファッションの聖地・東京銀座の並木道に取り上げられるなど、その魅力は脈々と生かされ続けています。

 

   樹木写真の属性
 樹  種 カツラ(桂)[カツラ科カツラ属]

(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地  島根県雲南市大東町  
 撮影年月  2020年3,8,10月
 投稿者  木村樹太郎   
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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