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(173) 古都の風情を堪能させる 京都・円山公園の桜 京都の円山公園は桜の名所としても知られ、桜の時期には多くの人でにぎわいますが、ここは他の地方にある桜名所とは違い、古都の風情を堪能させる場所です。 |
(173-1) 和服姿で桜を楽しむ人々 訪ねた時は円山公園も桜が満開で、多くの人で賑わっていました。桜の下には昔ながらの赤い毛氈を敷いた花見の席が設けられ、古都の花見の雰囲気を高めていました。 そしてさすが古都京都と感心させられたのは、公園内を散策している人々の多くが和服を着ていることでした。 後日、京都の友人に聞くと「円山公園あたりで和服を着ているのはほとんど観光客です。しかもその和服はみなレンタルですよ」といささか興醒めの話でしたが、たとえレンタル着物に身を包んだ観光客としても、古都の風情を高めるには大いに役立っているようです。 |
(173-2) 松の緑と桜の花 円山公園も上の方に行くと桜だけでなく松の木もあり、松の緑と桜のピンクが織りなす景色は中々に良い眺めでした。 |
万葉集の選者と言われる大伴家持(716~785)は次のような和歌を詠んでいます。 「八千種の花は移ろう、常盤なる松のさ枝を我は結ばな」と詠み、移ろいやすい花よりも常盤の生命力を示す松の緑を称揚していますが、古都ではこの昔の人の心が今でも息づいていると感じさせられます。 |
(173-3) 祇園の枝垂れ桜 円山公園の桜で最大の呼び物は「祇園の枝垂れ桜」でしょう。この桜は「一重白彼岸枝垂れ桜」と言われ、一本桜としても中々に立派な大木です。主幹がまっすぐに伸びユッタリと枝を広げて枝をしだれているさまは、樹形としても第一級の美しさがあります。 枝垂れ桜の優美さは古都京都の優雅とよくマッチしており、観光客に古都京都を感じさせるものです。京都府は府のシンボル花として枝垂れ桜を指定しています。 |
「祇園の枝垂れ桜」あるいは「祇園の夜桜」と呼ばれるものは数百年も前からあったのですが、昔からあった歴史的な枝垂れ桜は昭和22年(1947年)に枯死してしまい、現在私たちが見ているのは二代目です。昭和初年に初代の桜から種子を採り育てられたものだそうですから、樹齢は100年近くになります。桜もまた古都の歴史を紡いでいると感じさせる枝垂れ桜です。 |
(173-4) かがり火に火がともされる 古都京都を感じさせるのはそれだけではなかったのです。日が西に傾くころ、どこからともなく荷車を引いた人が表れ、桜の木の周りにある鉄の籠の中に薪を配り、火をつけて回り始めました。 はじめ枝垂れ桜の周りにある鉄の籠のようなものは何だろと思っていたのですが、これが夜間照明用のかがり火を焚く籠だったのです。これを見て古都の雅もここに極まれりと思わずにはおれませんでした。 |
(172-4) 夜空に浮かび上がる祇園・枝垂れ桜 あたりが暗くなるにつれ枝垂れ桜が夜空に浮かび上がり、月も中天にかかり、円山公園のお花見も最高潮を迎えました。 |
歌人・与謝野晶子(1878~1942)は次の和歌を残しています。 「清水へ、祇園をよぎる桜月夜、今宵会う人みな美し」 与謝野晶子もかがり火に照らし出された祇園枝垂れ桜を見たことでしょう。そしてその桜は現在私たちが見ているものではなく先代の枝垂れ桜です。千年の都の悠久の時の流れを感じさせる祇園の枝垂れ桜です。 |
樹木写真の属性 | |
樹 種 | エドヒガン(江戸彼岸)[バラ科サクラ属] (「樹木の見所」のページにリンクしています) |
樹木の所在地 | 京都市東山区円山町 円山公園 |
撮影年月 | 2022年4月 |
投稿者 | 木村 樹太郎 |
投稿者住所 | 島根県邑智郡川本町 |
その他 |