(128) 四季を通じて楽しむ
横浜「みなとみらい」の並木彩々
横浜市の「みなとみらい」地区は1980年頃から再開発が進み、1990年頃に主要部分の装いが完成した新しい街です。そこでは主要な街路が、さくら通り、けやき通り、いちょう通り、すずかけ通り、とちのき通り、と呼ばれている事から分かるように、樹木を大切にする街です。様々な街路樹が植栽され、多くは樹齢30年を超して立派に育ち、四季を通じて樹木の魅力を楽しむことができます。

  

 (128-1) 春到来を告げるモクレン並木
 
 サクラ(桜)より少し早く、”美術の広場”のモクレン並木が満開になり、モクレン(木蓮)のゴージャスな花が、春の訪れを伝えるファンファーレのように咲き誇ります。

 モクレンには花の色が暗紫色のシモクレン(紫木蓮)と花の色が真っ白のハクモクレン(白木蓮)がありますが、「みなとみらい」のモクレンは花の色から見て、シモクレンとハクモクレンの交雑種であるサラサモクレン(沙羅木蓮)ではないかと思われます。

写真撮影:2015年3月下旬

  

  (128-2) さくら通りのサクラ並木
「みなとみらい」地区はランドマークタワーに代表されるおしゃれな高層ビル群、水辺には帆船日本丸など華やかな雰囲気に包まれていますが、”さくら通り”のサクラ(桜)が満開の花を咲かせる頃、華やかさも最高潮に達します。
写真撮影:2015年4月上旬
 
サクラ(桜)も多くの種類がありますが、並木として植えられる桜は十中八九ソメイヨシノ(染井吉野)でしょう。この桜はクローン種ですから、何十本、何百本の桜が神業の様に一斉に花を咲かせ、サット散ってしまいます。まさに「養花一年、観花三日」のことわざ通りです。

     

 (128-3) ケヤキ並木とスズカケ並木

 花の時期が過ぎると、主役は”けやき通り”や”すずかけ通り”に移ります。

 樹高20m以上の高木になり、高いところで大きく枝を広げるケヤキ(欅)は大きなビルが立ち並ぶビル街の街路樹として打って付けです。特に若葉の季節のケヤキ並木(左写真上)は無機質なビル街に極上の潤いを与えます。夏にはコンクリートジャングルを灼熱地獄から緑のオアシスへと変えてくれます。

 きれいに剪定され整然と並ぶ”すずかけ通り”のスズカケ並木(左写真下)は新しい街のさわやかさを最高に高めています。世界四大街路樹と呼ばれているものの一つに「プラタナス」がありますが、プラタナスは「スズカケノキ」の総称であり、ここ「みなとみらい」のスズカケ並木を見ると、プラタナスが世界四大街路樹に数えられることも、なるほどと思わされます。

写真撮影:2019年5月中旬
 

  

  (128-4) 秋を彩るモミジバフウ並木
”美術の広場”入り口のモミジバフウ並木が色付くころ、秋本番を迎えます。モミジバフウの紅葉は個体差が大きく、木によって、あるいは同じ木でも場所によって、紅葉の進みぐわいに差が生じます。これは紅葉のグラデュエーションを生じ、むしろこれがモミジバフウの紅葉の魅力となっています。
モミジバフウ並木の両端にメタセコイアが植えられていますが、秋も深まりモミジバフウの葉がすっかり落ちてしまう頃、メタセコイアが黄褐色に色付き、晩秋の”みなとみらい”の紅葉のフィナーレを飾ります。
写真撮影:2016年11月中旬
 
紅葉といえばイチョウであり、”いちょう通り”の黄葉も期待されます。一般にイチョウの成長はゆっくりしており、見事なイチョウ並木になるには最低でも50年はかかるでしょう。”みなとみらい”のイチョウ並木はまだ若すぎますが、20~30年後には立派なイチョウ並木に育ち、見事な黄葉を見せてくれることでしょう。

  

 (128-5) 冬も緑を絶やさぬタブノキ並木
 
 冬を迎え、ほとんどの並木が葉を落として冬ごもりに入ってしまう時期になると、グランモール公園のタブノキ並木(左写真)が注目されます。 タブノキ(椨の木)は一年中緑を絶やさず、この並木は冬でも心安らぐ空間を生み出してくれます。

 タブノキはクスノキ(楠)の仲間で、イヌグス(犬楠)とかタマグス(玉楠)とも呼ばれます。横浜市開港資料館の中庭に玉楠の古木があり、横浜開港の歴史を語り伝えていますが、このタブノキ並木も横浜開港以来の歴史に思いを馳せさせてくれます。

写真撮影:2015年1月上旬

  

   樹木写真の属性
 樹  種 モクレン(木蓮)[モクレン科モクレン属]
ソメイヨシノ(染井吉野)[バラ科サクラ属]
ケヤキ(欅)[ニレ科ケヤキ属
スズカケノキ(鈴懸の木)[スズカケノキ科スズカケノキ属
モミジバフウ(もみじ葉楓)[フウ科フウ属
タブノキ(椨の木)[クスノキ科タブノキ属
(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地  横浜市西区 みなとみらい  
 撮影年月  本文に記載
 投稿者   中村 靖   
 投稿者住所  神奈川県横浜市都筑区中川中央
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